肥満と腸内フローラ②|レプレ式カラダ辞典

LEPRE式カラダ辞典

肥満と腸内フローラ②

協力(提携先):医療法人社団ひのき会証クリニック・株式会社マメキカク

腸内細菌と胆汁酸

褐色脂肪組織(渡り鳥などに見られる、持続的に供給されるエネルギー源としての脂肪)におけるエネルギー消費には、
胆汁酸受容体GPBARを介した胆汁酸の作用が重要です。

胆汁酸は腸内細菌によって代謝されますが、胆汁酸受容体に対する活性が異なることから、
肥満者の偏った腸内細菌による胆汁酸代謝の違いが胆汁酸組成を変化させ、
褐色脂肪組織のエネルギー消費を低下させ、肥満の発症に寄与していると考えられています。

肥満症とエネルギー回収

哺乳類は、植物細胞壁の主成分であるセルロースなどの繊維性多糖を分解する酵素を保有しないため、
腸内細菌がこれらを発光分解することでエネルギーとして利用可能になります。
この経路により得られるエネルギーは、欧米人では一日140~180kcalに及ぶとされていますが、
マウスでの実験段階では、このエネルギー回収は肥満の形成に寄与すると考えられています。

また、腸管内容物からのエネルギー回収には、腸管における食物の滞留時間も重要な因子となります。
腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸は、腸管ホルモンのPYYの産生を促進し、消化管蠕動運動を抑制し、
エネルギー回収を促進していることが、マウスの実験から示されています。

腸管内分泌細胞L細胞より分泌されるglucagon-lile-peptide1(GLP-1)も、腸内細菌の産生する短鎖脂肪酸の制御を受けることが報告されており、
腸内細菌は種々の腸管ホルモン産生に影響し、腸管運動の制御を介することでもエネルギー回収を促進していることが推測されています。

腸内細菌と肥満症の関連

腸内細菌と肥満症の関連

腸内細菌と肥満症の関連に対する研究が多くなされていますが、現在必ずしも結果の一致を見てはいません。
これまでの報告からは、肥満者に特定の腸内細菌が認められるのではなく、
腸内フローラの全体の多様性が肥満者では減じていると解釈するのが正しいようです。

元来、腸内フローラの構成要素は多彩であり、そのため外界からのエネルギー負荷などのストレスに柔軟に代謝平衡を保つことが可能となっていますが、
肥満者では腸内フローラが柔軟性を欠き、その平衡が破綻をきたしていると考えられます。奇跡のバランスが崩れている、というわけです。