肥満の現状|レプレ式カラダ辞典

LEPRE式カラダ辞典

肥満の現状

協力(提携先):医療法人社団ひのき会証クリニック・株式会社マメキカク

肥満ってどういうこと?

肥満ってどういうこと?

肥満は、普通、「太っている」という意味で使われますが、医学的には「脂肪が一定以上に多くなった状態」のことを指します。
人の身体は大まかには、水分・筋肉に多い糖質とたんぱく質・骨に多いミネラル・脂肪でできていると言えますが、
肥満はこのなかの脂肪の割合が多すぎる状態です。

よって、体重が重くても、プロレスラーやハンマー投げの選手などのように筋肉や骨の割合が多い人は脂肪が少ないので、
肥満ではないのです。(厚生労働省HPより)

私は肥満?

現在、肥満かどうかの判定は一般的にBMI(肥満指数:体重/身長×身長)の数値で行われています。

BMI(肥満指数:体重/身長×身長)

世界保健機関(World Health Organization:WHO)はBMI≧25をoverweight(太り過ぎ)、≧30をobesity(肥満)としていますが、
日本では、日本肥満学会の提案に従ってBMI≧25を肥満としています。

BMI(肥満指数:体重/身長×身長)

また、BMIが25を超えていて、肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併症が予測され、医学的に減量を必要としている場合を「肥満症」、
健康障害はなくても、BMIが25を超えており、特に内臓脂肪がたくさんたまっている状態を「ハイリスク肥満」と位置づけ、治療介入のターゲットにしています。

肥満だといけないの?

肥満が疾病であるのか、あるいはリスクがあるのかについては、世界各国で長年にわたり議論されてきましたが、結論が未だに得られていないのが実情です。
ただ、肥満は脂肪の蓄積部位により、内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分類されるのですが、
内蔵脂肪型肥満はメタボリックシンドロームの原因であり、多くの疾患の元凶となるとされています。

また、糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症、月経異常などを合併することが多く、最終的には、生命予後も悪くします。
その他、直接的な肥満との因果関係がなくても深い関連があるという意味で、
胆石症、静脈血栓塞栓症、気管支喘息、胆道系や大腸、乳腺、子宮内膜の癌が知られています。

世界的な肥満の傾向

2013年にはBMI25以上の肥満者は、約21億人存在しており、1980年時と比べて成人では約28%未成年では約47%増加しています。
それに伴い、2形糖尿病患者は1980年の1.5億人から2008年の3.5億人と増加し、2035年には5.9億人になると予測されています。

西欧諸国では肥満が深刻な社会問題となっています。
また、発展途上国において、テレビ、自動車、コンピューターを所有している人は、肥満が3倍に、2形糖尿病が2.5倍に発症率が上昇していることが報告されており、
つまり生活が豊かになると、身体活動量が低下し、運動不足に陥るということです。

日本における肥満の傾向

肥満の割合

日本においてもBMI25以上の肥満者は

成人男性では
28.9%
成人女性では
17.6%
未成人男性では
15.3%
未成人女性では
12.4%

存在しており、4~5人に一人は肥満者となっています。

西欧諸国では肥満が深刻な社会問題となっていますが、
幸いに、我が国では全体としての肥満者の割合はこの10年間は変化していません。

日本人は、体質的に比較的低BMIでも糖尿病などの生活習慣病を発症しやすいという特徴があるとされており、
そのため、諸外国と比較して、肥満の程度は軽く、国民当たりの肥満者の割合も圧倒的に低い割合にとどまっているなかで、
肥満症という疾病単位を世界に先駆けて提唱し、生活習慣病の発症や重症化を予防すべく、国を挙げて特定検診・特定保健指導制度を導入し、
適正な体重管理を重視してきたことが実績をあげつつあるとも言えるでしょう。

しかしながら…

男性の肥満

しかしながら、20~60歳代男性の肥満者(BMI25以上)の割合は

1997年には
24.3%
2009年には
31.7%

と増加の一途をたどりました。
直近の国民健康・栄養調査では28.6%とやや頭打ちとなりましたが、
労働生産性の高い40歳代および50歳代の男性に置ける肥満者の割合は1980年から増加の一途をたどり、3人に1人は肥満とされています。

また、日本のメタボリックシンドロームの診断基準で見ると、
実は男性の40~70歳代では2人に1人がメタボリックシンドローム、あるいはその予備軍であり、その比率は3人に1人より高い状態です。
従って、BMI25以上の肥満も問題ですが、肥満の手前の時点で既に高血圧、高脂血症、あるいは糖代謝異常などの問題をきたしていることを示しています。
肥満に至る前段階から注意が必要ということです。

女性の肥満

一方、40~60歳代の女性の肥満者の割合は、

1997年の
25.2%
2009年には
21.8%

と有意な減少を認め、直近の国民健康・栄養調査でも20.3%と引き続き減少傾向にあります。

なお、女性では肥満の問題は一貫して改善傾向にありますが、
20代や30代で痩せの割合が高い一方、50代以降で肥満者の割合が高いことが問題とされています。
70代になってくると4人に1人が肥満です。

高齢者の肥満

2013年の国民・栄養調査によると70歳以上の肥満(BMI25以上)は

男性
28%
女性
27%

男性の肥満の割合は40代の35%でピークを迎えそれ以上では下がります。
一方、女性の40代は15%ですが、年齢を経るにつれ増える傾向があります。

女性は更年期以降、女性ホルモンの減少などで内臓脂肪が増えやすくなり、基礎代謝量も減少します。
エネルギーが燃えにくくなり、体重も増えやすくなるのです。

日本人のBMIと総死亡リスクの関係を調べた研究では、
男女とも、BMI23~25程度が低リスクであり、30以上では高リスクですが、25~27程度なら肥満でもリスク上昇は緩やかです。
循環器病との関係では、BMI27以上の肥満女性では脳卒中のリスクが高まりますが、心筋梗塞など虚血性心疾患のリスクは高まりません。
更年期からの女性の体重増加はある程度は自然な生理現象とも考えられます。

肥満ばかりが健康のリスクではなく、肥満の程度によることや、高血圧や高血糖など数あるリスクの内の1つと考えることが大切です。(2015 朝日新聞より)