冬の脱水|レプレ式カラダ辞典

LEPRE式カラダ辞典

冬の脱水

協力(提携先):医療法人社団ひのき会証クリニック・株式会社マメキカク

夏の暑い時期に、脱水・熱中症対策を意識することは常識となってきています。
しかし、温度や湿度が下がる冬の脱水についてはまだまだ意識が低いようです。

私たちの体内の水

私たちの体に占める水分量

水は、人間の体重の50%~60%を占めています(質量では70%~80%を占めています)。
体内における水(体液)は細胞内液(体重の約40%)と細胞外液(体重の約15%、血液・リンパ液など)に大きく分けられます。
生命現象を司る化学反応はすべて、水に溶けて初めて進行するため、体内における水の果たす役割は大変重要です。
その他、体内の物質輸送や分泌物、粘液に用いられ、
またゲル化することで体を支える構造体やレンズにも利用されています。

水の働きとして、溶解作用、運搬作用、体温保持作用があります。

溶解作用
水の化学的性質の特徴として、他の物質をよく溶かす(溶解力が大変強い)ということがあります。
水は多かれ少なかれ何かを溶かし込んでいて、水素と酸素が化合しただけの水は、特に「純水」と言われます。
体内に取り込まれた重要な物質の多くは、水に溶けて体の各所に運ばれ、生命活動に使われているというわけです(理想的な溶媒)。
運搬作用
体内における物質の移動、細胞内外の移動を司り、老廃物の排泄や栄養物質を運搬します。
体温保持作用
水は比熱が大きいため、気温や室温が低下しても体温は低下しにくいです。
また、体温が高くなると、皮膚より汗を出し、気化熱を奪わせ、効率的に体温を下げています。

成人の場合、
1日の水分摂取量として、食物、飲料水、代謝水(体内で栄養素が燃焼することにようり得られる水)があります。
また、排泄として、尿、大便、不感蒸泄があります。
個人の体格差を考慮すれば、通常の環境下では体重×20mlが適当な1日水分量であると言えます。

不感蒸泄とは?

体内の水分出納

体から出て行く水は、尿、大便、汗などがすぐに思い浮かぶと思います。
室温が高いと、体に汗をたくさんかいて、「水分を取らなくちゃ!」と感じますね。
では不感蒸泄って何でしょう?

汗には、目に見える有感蒸泄(つまり自覚できるもの。発汗など)と、目には見えない不感蒸泄があり、
不感蒸泄は、呼吸によるものと、皮膚面からのもの(汗腺からのものではなく角層を通して皮膚面から)があります。
不感蒸泄の量は、常温安静時には健常成人で1日になんと約900ml
皮膚から約600ml、呼気による喪失分が約300mlで、1L近くにもなるのです。

なお、全不感蒸泄量の70%を皮膚面からの不感蒸泄が占めています。
また、その量は環境によって変化し、体温が1度上がる毎に15%増加し、また外気温が30度より1度上昇する枚に15%増加するようです。

冬でも不感蒸泄は起こる

人にとって快適な湿度は約40~60%と言われていますが、日本の冬の外気湿度は50%程度。とても乾燥しています。(夏は70%超)
冬型の気圧配置によって、まず空気(外気)が乾燥しやすい。湿度が50%を切ることも珍しくありません。

冬は外気温が低いために、室内を暖房で暖めます。
そうすると空気が膨張して増えますが、そこに含まれる水(水蒸気)の量は変わらないため、相対湿度は低下していきます。
例えば、気温が10度、相対湿度が100%の空気を25度まで温めると、相対湿度は41%に落ちてしまうのです。

暖房器具の使用、機密性の高い住居

暖房器具の使用、機密性の高い住居。冬の室内は、屋外よりも10%~20%湿度が下がる傾向があります。
暖房中の室内は、屋外よりもはるかに強い乾燥状態になりやすくなっているのです。
このような状態では、皮膚や呼気から知らず知らずのうちに水分が失われていきます。(不感蒸泄)

そして、放っておけば体の中もカラカラ状態になってしまいます。
このような乾燥した環境で、さらに呼気や皮膚から体の水分が多く失われると、
体内から水分が奪われ、異物を排泄しにくくなってしまうのです。
普段からこまめな水分補給は大事です。

冬の脱水

「汗をかいてないし、冬に脱水なんてしないよ」、ということはないとお分かりいただけたでしょうか?
冬季はコタツという天国のような存在や電気毛布などで自覚なく脱水してく環境が整っています。
また、特に高齢者や子供は注意が必要です。

意外と知られていないのは、水は結構筋肉に蓄えられているということ。
高齢者の方は筋肉の量が減り、十分な水分を蓄えることができません。

そして、子供は表皮全体が薄く、最外層の角質層が薄くなっています。このため、特に新生児・未熟児は皮膚からの不感蒸泄が多いのです。
体重に比して体表面積が大きいため、体重あたりの不感蒸泄は乳児では成人の2.5~3倍の量となります。
汗腺数も密で、皮膚のpHが成人では4.2~5.6に対して、新生児では6~7であり、酸度が低いことによって皮膚の自浄作用も弱くなってしまうのです。