私たちの体の中の腸内フローラ|レプレ式カラダ辞典

LEPRE式カラダ辞典

私たちの体の中の腸内フローラ

協力(提携先):医療法人社団ひのき会証クリニック・株式会社マメキカク

私たちの体の中の腸内フローラ

私たちの体の中の腸内フローラ

人の腸内には、重量として1kg~2kg、今わかっているだけでも200種類(500種類とも)以上、
100兆個に及ぶ腸内細菌が共生しているとされており、宿主固有の細菌叢(フローラ)を有しています。

腸内細菌は毎日増殖しており、便の1/2~1/3以上は腸内細菌の塊です。
腸内細菌を一列に並べると地球を2周半もする長さになり、個性豊かな細菌たちが暮らしています。
地球一個分がお腹の中にあるというイメージですね。

細菌には大きく70グループくらいあります。このうち4つのグループだけが腸内に住んでいます。
ファーミキューティス門、バクテロイデテス門、アクチノバクテイア門、プロテオバクテリア門です。

腸内細菌のバランスを改善し、ヒトに有益な作用をもたらす生きた微生物をプロバイオティクスとよびます。
21世紀はプロバイオティクスによる予防医学の時代と考えられています。

腸内フローラと腸管粘膜

腸内フローラと腸管粘膜

腸は人間にとって重要な免疫を担当する臓器です。
腸の内壁を覆う粘液系は身体の中に入ってきた異物を感知し、体の外に排除します。
腸内細菌も本来は異物ですが、免疫システムが生体にとって有用と認識し、共生関係をつくっているのです。

腸管の長さは約10m、襞上の粘膜面を絨毛といいます。
腸管を全部広げるとテニスコートの2分の一から3分の2の面積になるといわれています。
私たちは日々の飲食によってこの広大な表面積から様々なものを取り込んでいます。

この腸管粘膜には約1兆に及ぶ粘液担当細胞が存在します。
また粘膜免疫の司令塔といえる腸管関連リンパ組織(GALT)が存在します。
更に腸内細菌は、腸管の粘膜免疫システムの発達に深くかかわっています。

腸内細菌の取捨選択

胎児の腸は無菌状態で、オギャー!と生まれた誕生の瞬間、菌と出会います。
菌は鼻や口から入り、幼児期以降に個人特有の一定の組成を示すようになるといわれています。
この個人特有の組成は、遺伝的要因、食習慣を含めた環境要因双方により規定されますが、個人差が大きく、更に一度構築された個人腸内フローラは、短期的な食事内容の変更や一般的な抗生剤の投与では、その組成の恒常的な変化は生じ難いと報告されています。

では、数ある細菌たちの中で、人間にとって必要な菌をどのようにセレクトしているのでしょうか?
長い進化の中で、人間にとっていいものだけ、都合の良いものだけ、共に生きる腸内細菌をどのように選んでいるのでしょう?

それは腸の中の分泌物…IgA抗体が決めているのです。
そもそもIgA抗体は体の中に入ってきた細菌を攻撃するものです。IgAが表面に取り付き、菌を殺すのです。
しかし、IgA抗体は、攻撃ではなく人間にとって必要な菌をセレクトして腸に住み着かせているのです。

実は腸内細菌が腸の中に住み着くのは容易なことではありません。
腸の中には流れがあり、細菌たちが流されないようにする為には、ムチン層といわれる、厚さ0.1mmの粘液層にいるしかありません。
しかしこの場所は粘り気が強く、普通は細菌が中に入ることはできません。IgA抗体に選ばれたものだけが粘液層に入れるのです。
腸の壁から大量のIgA抗体がわき上がり、ムチン層の外にいる細菌の表面にへばりつき、抵抗を減らしてムチン層の中に入ることができるのです。

IgA抗体がどんな菌を選ぶのかは、私たちの祖先が細菌たちとともに過ごす中で徐々に決められてきました。
長い時間をかけてつくりあげられた、巧妙な仕組みが私たちの身体の中に秘められていて、私たちは細菌たちと共に長い進化の歴史を過ごしてきました。
その過程でお互いに助け合う仕組みを発達させたのです。
細菌たちにも腸内は安住の地です。私たちは腸内細菌と一緒になって1つの生命体なのです。
これらのことはこの5年くらいで、科学技術の進歩とともにわかってきました。